ディズニー加賀美会長「アフターコロナのパーク運営」を語る チケットに価格変動制導入?

皆さん、こんにちは。

2020年8月13日(木)付の読売新聞朝刊10面に、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドの加賀美俊夫(加賀美俊夫)会長のインタビューが掲載されました。

紙面のスペース的には6分の1ほど。1時間ほどのインタビューを要約した内容でしたが、加賀美氏の発言は、コロナ禍以降のディズニーパークの方向性を大きく変える示唆に富んでいました。

そこで、今回は、この記事を取り上げ、会長が示す「アフターコロナのパークの姿」を標榜したいと思います。

 

 

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パーク再開に至る経緯

 

2020年2月28日11時30分。

オリエンタルランドは、新型コロナウィルス蔓延を防止するため、2月29日からランド、シーを臨時休園することを緊急発表しました。

当初、休園は短期間で終了すると予測されましたが、新型コロナウィルスの感染力はすさまじく、結果、ディズニーは6月30日まで約4か月間の休園を余儀なくされました。

 

パークの再開が発表されたのは、6月23日。再開日は7月1日です。

これについて加賀美会長は、

加賀美氏「再開前にコロナの感染防止のため、従業員に2週間以上の訓練を行った。」と内情を語っています。’(以下、「」内は、加賀美氏の発言をそのまま引用)

また、パーク再開後は、

「(3密を避けるなどの)対策に来園者が非常に協力的なことに驚いている。」とも。

 

ディズニーパークが4か月も休園したのは、1983年の開業以降、初めてのことです。2011年3月11日に発生した東日本大震災による休園では、パーク内外の各所が地震で被害を受けたにも関わらず、ランドは4月15日に、シーは4月28日に営業を再開しました。

この時も、震災後に再開したパークは、ショー、パレードは中止や規模縮小、ショップなども営業縮小するなど、万全の状態ではありませんでした。それでもファンは、パークが営業しているだけで、精神的な安定を感じていました。

「行きたい時にディズニーに行けるって、なんて幸せなんだろう。」と。

そういった経験があったからこそ、多くのディズニーファンが、今回のコロナ禍後のパークの再開に関するお願いごとに協力的なのだと思われます。

 

 

加賀美氏 再開後のパークについて語る

 

加賀美氏は、再開後のパークについて、

「現在、来園者数は例年の1日平均(約8万人)の半分程度に抑えている。状況を見て増やしたい。」

「元の水準に戻るまでには、2年くらいかかるのではないか。」

と述べています。

再開後の入園者数の実数が関係者の口から語られたのは、おそらく今回が初めてでしょう。

パーク再開のニュースが出た時は、マスコミが勝手に「入園者は、1日15,000人」と吹聴したことが、様々な憶測を呼びました。

この「1日8万人」は、ランド、シーの入園者数の合計と思われますが、これには、年間パスポート(2パーク共通、通称「共通年パス」)、バケーションパッケージ利用客のように、1日で両パークに入園できるゲストが含まれています。正確には「のべ8万人」で、実際の2パークの入園者数は、7万人くらいではと推測します。

また、再開後は休止している、ランドのパレードについては、

「キャラクターが乗り物で周回するパレードは、途中で停止して来場者と触れ合うのは難しい。乗り物が止まらずに通過する形で再開することになるだろう。」と述べています。

ランドのパレードは、アトラクションと同様、集客の目玉イベントです。華やかに装飾されたフロート(自走式の山車)も見ものですが、フロートがが停止して、キャラやダンサーがゲストと触れ合う「停止モード」は、ファンの人気が高く、停止モードをいい場所で鑑賞したくて、開園直後からパレードルートで場所取りする熱心なゲストもたくさんおられます。

加賀美氏のこの発言は、今後のランドのパレードの構成や演出に大きな影響を及ぼすでしょう。

 

 

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ランドのハロウィーン限定のパレード「スプーキーBOO」の停止モードの1シーン。

目の前で繰り広げられるパフォーマンスは迫力満点です。今後のパレードには、こういったお楽しみシーンがなくなってしまう?

 

 

 

チケット制度の変更を示唆

 

これは、インタビュー内で飛び出した、ある意味「爆弾発言」です。

加賀美氏は、

「チケット制度を変えることを検討している。

現在は、パスポートを買えば、すべてのアトラクションを楽しめるが、利用日に応じてチケットの値段が変わる仕組みの導入も考えている。」

こう述べています。

つまり、パスポート制度は継続するが、平日や混雑日でチケットの値段が変わる「価格変動制」の導入を考えているということです。

チケットの価格変動制は、テーマパークの西の雄・ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)では、すでに導入されています。

混雑日のチケット代を割増料金にすることで、入園者数を多少、抑えることが出来、それがパーク内の混雑緩和につながります。ディズニーの場合は、2年前から、年間パスポートに「入園除外日」に(主に繁忙日)を設定し、混雑日に来園者数が読めない年パス所有者の入園を遠慮してもらう形を取っています。

パークが再開した7月1日以降に販売している日付指定チケットは、入園時の密を防ぐため、8時から入園(1ディ)、11時から入園、14時から入園の3種類で、入園時間が遅いほど、割安料金になっています。

このチケットの購入はオンラインのみ、決済はクレジットカードのみとなっています。もしかしたら、このチケット販売システム自体が、今後導入されるであろう、価格変動制チケットの「試験運用」なのかもしれません。

 

コロナ休園のダメージの大きさ

 

加賀美氏によると、

「2020年4~6月期連結決算は、最終利益が248億円の赤字(前年同期は229億円の黒字)だった。7~9月期は改善に向かうだろうが、引き続き厳しいと思う。」

「2023年頃までのアトラクションなどの投資計画」(シーの新エリア)は現時点では予定通りに行う。」

とのこと。

「美女と野獣をテーマにしたエリアは、利用者数を抑える工夫をしてオープンしたい。」と語り、インタビューを締めくくっています。

 

2020年4~6月のパークは、丸々休園していたので、パーク自体の収入は1円もありません。それでも、パークの維持、整備にかかる費用は毎日出ていくし、キャストの休業中の給与も保障しなくてはなりません。

5月27日~6月24日の間は、ショッピングアプリでグッズの販売などを行っていましたが、その売り上げなんて、パークが通常営業していた時の1日の売り上げに比べたら、微々たるものです。

 

今回の加賀美氏のインタビューの内容は、今後の東京ディズニーリゾートのあり方や方向性を描いた「デッサン」として、非常に価値があるものだと言えるでしょう。

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