ディズニーランド「美女と野獣」2020東京五輪が無ければ水流ライドになるはずだった!?

皆さん、こんにちは!

今年も暑い夏がやってきましたね。ディズニーでは千葉県のまん防実施を受けて、入園者数を絞り、営業時間を短縮した自粛営業でゲストをお迎えしています。

さて、2021年7月23日(金)に、コロナ禍で開催が1年遅れた「東京オリンピック/東京2020」がようやく開幕しました。23日の20時から開催された開会式の様子は日本だけでなく全世界にも同時配信されたので、TVなどでご覧になった方々も多いことでしょう。

ところで、日本のディズニーと東京五輪開催には、密接な関係があることをご存じですか? それはランドの新エリア建設に関係するお話。そう、2020年東京五輪開催決定によって、10年、20年先のディズニーの未来が大きく変わったと言っても過言ではないのです。

 

そこで今回は、今まで集めてきたランドの新エリア関係の情報を基に、ランドと東京五輪の意外なつながりを解き明かしていきたいと思います。

この記事を読んだら、明日からディズニーパークの景色が違って見えるかも?

 

 

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ディズニーランド再開発計画

 

日本に東京ディズニーランドが開業したのは、1983年4月15日です。当時はだだっ広い埋め立て地の真ん中にシンデレラ城がドーンとそびえ、その周辺だけがカラフルに彩られた「異世界」と言った雰囲気でした。当時の最寄り駅は、地下鉄東西線「浦安駅」で、そこからさらにシャトルバスで15分かかっていたんですよ。

その後、1988年にJR京葉線「舞浜駅」が開業。パークへのアクセスが格段に良くなり、東京ディズニーランドの知名度もぐんぐん上がっていきました。東京ディズニーランドの成功をきっかけに、1990年代にテーマパークブームが巻き起こり、日本各地にテーマパークが次々と建設されていきました。(今でも生き残っているのは、ごく一部だが)

東京ディズニーランドの方はその後も順調に入園者数を伸ばしていき、余剰地に新たなアトラクションが次々と完成。2000年頃にはランドの敷地面積の全てがアトラクションで埋まった状態になり、開園から17年を経てようやく「東京ディズニーランド」が全て完成したということになります。

 

開業年 アトラクション名 エリア、概要
1987年 ビッグサンダー・マウンテン

ウェスタンランド

ジェットコースター

1992年 スプラッシュ・マウンテン

クリッターカントリー(新エリア)

水流ライド

1996年 トゥーンタウン/新エリア

ミートミッキー(キャラグリ施設)

子供向けの小規模ライドなど

2000年 プーさんのハニーハント

ファンタジーランド

ライド型アトラクション

 

故ウォルト・ディズニーは、「ディズニーランドは永遠に完成しない。」という名言を残しています。

その言葉を実践するように、2000年以降のパークでは、鮮度の落ちたアトラクションをクローズして内装を変え、新しいアトラクションと入れ替える新陳代謝を繰り返しています。そして古い建物を壊して新しく立て替える「スクラップ&ビルド」がエリア規模で行われたのが、2020年9月に開業した「新エリア」なのです。

 

 

新エリア着工時期が二転三転したのは、東京五輪の影響

 

実はファンタジーランドを中心としたエリア再開発については、2014年頃から関係者情報として計画の一部が各メディアに流出していました。

そういった憶測の道筋を正す意味でオリエンタルランドが2015年4月に公表したのが、「東京ディズニーランド/東京ディズニーシー 2023年ありたい姿」です。再開発の目的や規模、すでに出来上がっている施設のイメージイラストを盛り込んだその内容は、今、まさにランドの再開発計画が進行中であることの証明でもありました。

https://www.tokyodisneyresort.jp/tdrblog/detail/pr150428/

 

この発表と時を前後して、2013年9月、2020年夏季五輪の開催地が東京都に決定しました。開催期間は当初から2020年7月23日~8月8日であることが確定していました。

 

その後、「2023ありたい姿」は、なぜか一旦、白紙状態に戻され、オリエンタルランド側もしばらく沈黙を続けていました。

そんな中である情報がネットに流れ、一部のディズニーファンがざわつきました。それがこちら。

「建設通信新聞」とは、いわゆる業界関係者対象の新聞です。食品や製造関係などの業界にはこういった専門新聞や雑誌が多数存在しており、内容の信頼度はかなり高いです。

 

 

「新ファンタジーランドは計11棟で構成」というタイトルから、ランドの新エリアの建造物の概要書の写しであることが分かります。

このトップに書かれている「2階建て水流ライド・レストラン併設」は当初、「イッツ・ア・スモールワールド」をつぶし、場所を移動させて建て替えるという意見が出ていました。

 

概要書の個々の建物が実際はどんな建物になったのかは、こちらの記事で詳しく解説しています。

 

東京ディズニーランド「新エリア」オープンまで待てない!!お城やアトラクションは、どこまで出来ているの?

 

https://sskumatei.com/1805.html

 

そして2016年4月、オリエンタルランドはついに沈黙を破り、新エリアの全容を一挙に発表しました。

「ニュース! 今後の施設開発計画について」(2016年4月27日)

https://www.tokyodisneyresort.jp/tdrblog/detail/pr160427/

 

新エリア開発の目玉は「美女と野獣エリア」の新設です。所属はファンタジーランドですが、野獣のお城に大型アトラクション、本格的なシアターと、ここだけで1つのエリアとして独立させても通用する規模の大きさ!

そして野獣のお城の1階に作られるのが、新アトラクション「美女と野獣魔法のものがたり」です。発表では、「ゲストは大きなお皿に乗って、踊るように移動しながら…」と紹介していることから、「プーさんのハニーハント」のようなライド型のアトラクションであることが分かります。

あれ、でも概要書だと「延べ10,977平方mの水流ライド」が一番大きなアトラクションのはず。ということは、「美女と野獣 魔法のものがたり」は本来、水流ライドで、何らかの理由で陸上走行型に仕様が変更されたということになります。なぜ?どうして???

 

 

TOKYO2020/東京オリンピック

 

その最大の理由は、おそらく「東京五輪2020」でしょう。オリンピックは本来、2020年7月23日から開催される予定でした。

しかし2020年2月に発生したコロナ禍の影響で開催が中止になり、1年後の2021年7月23日~8月8日に開催。オリンピックが1年も先に順延されたのは、長いオリンピックの歴史の中で初めての珍事です。

そして今の日本は、東京をはじめ主要都市に緊急事態宣言が出たままでオリンピックを開催しているという、超異常な状態になっています。

 

さて、では何で東京五輪がディズニーの新エリア開発に関係するのでしょうか? その理由は「インバウンド」外国人旅行者の存在にあります。

ここ数年、日本は諸外国から「一度は出かけてみたい国」として人気が急上昇しています。外国人旅行者は別名「バックパッカー」と呼ばれるように、バックパック(リュックサック)1つの軽装で1~2か月の長期滞在型で各地を旅するスタイルが定着しています。

おそらく、外国人旅行者は五輪開催前の5月、6月頃から日本に入国して日本各地を観光、オリンピックを観戦してから帰国するパターンが多いはず。東京ディズニーリゾートに滞在してパークを楽しむゲストも多いことでしょう。

そう、東京五輪開催は、ディズニーにとっても外国人ゲスト増大のビッグチャンスなのです。そういった海外からのゲストをおもてなしするためには、パーク側はどういった準備をすればいいのだろう? オリエンタルランドが出した結論が「東京五輪開催までにランドの新エリアを完成させる」ことだったのです。

そのため、2015年に発表した「2023ありたい姿」を一旦取り下げ、ランド、シー並行して行う予定だった大規模開発をランドだけ先行して行うスケジュールに組み替えました。それが2016年4月に発表した「今後の施設開発計画」です。新エリアのグランドオープンは2020年4月15日。東京五輪開催年の、東京ディズニーランドの開園記念日です。

 

まず新エリア建設工事の下準備として、2016年後半に新エリア建設予定地にあるスタージェットとグランドサーキッの営業を終了、施設を解体して更地に戻しました。新エリアの敷地確保のため、スペースマウンテン後方の平面駐車場の一部をランドの敷地に取り込み、駐車場の立体化工事も並行して行っています。

 

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むき出しになったスペースマウンテンの建物の裏側。ここは今まで高い樹木に囲われていて人目に触れることはありませんでした。

 

そして翌年2017年4月5日に新エリアの起工式を行い、3年に及ぶ新エリア建設工事が始まったのです。翌年2018年4月15日からはランドの入場ゲートの全面建て替え工事も始まりました。これはチケットの電子化の推進と、大量のゲストをスムーズに入園させる効果を狙ったもの。新エリア開業や東京五輪で増加する日本人ゲスト、外国人旅行者への対策であることは明らかです。

ということで2017~2020年3月のランドは、パークの3分の1が工事中というとんでもない状態になっていました。それでも連日ゲストは押し寄せるし、他のアトラクション、パレードやショーはきっちり上演していたんですよね。これぞディズニーマジック!!

 

 

「美女と野獣 魔法のものがたり」の本当の姿

 

東京五輪開催の年に合わせてランドの新エリアをオープンさせる、工期は3年。工事の遅れは絶対に許されない状況。クオリティーも落とせない。しかし2015年に提出した建築物の概要書通りの内容だと完成までに4年以上かかる。

そこでオリエンタルランド側は、新エリアの概要書を再検討し、3年で完成させられるボリュームに仕様を変更したのです。

一番大きな問題は「美女と野獣 魔法のものがたり」。新エリアのメインとなるこのアトラクション、本来は水流ライドになる予定でしたが、水流ライドは広大な敷地と後方施設の建設に時間がかかるので、とても3年では完成させられない。そこで水流ライドをあきらめ、ハニハンのような陸上走行型に設計を変えたと思われます。

実は「美女と野獣 魔法のものがたり」、私は公式のメイキング画像公開の時からものすごい違和感を感じていました。とにかく、アトラクションの中が広すぎる。広すぎてスカスカ?。2020年9月28日にグランドオープンした時の画像を見ても、「えっ、中はまだ半分しかできていないの?」って驚いたほどでした。その違和感は、水流ライドを陸上走行タイプに変更したことにあるような気がしてなりません。

 

<美女と野獣 魔法のものがたりのイメージイラスト/公式より引用>

例えば、このシーン。ベルが広いゲストルームに招かれ、たった一人で食事をする有名なシーンですね。アトラクションでは、このシーンはこんな風に表現されています。

 

美女と野獣

 

雰囲気はよく出ているけれど、ベルもテーブルも遠くてよく見えないなぁ、という印象ですね。このライドは10人乗りですが、半分の4、5人乗りでもよかったような気がする。そうすればもっとテーブルに近づけて、細かな演出もよく見えたのに。

他にも、概要書に出ていた「水流レストランに併設される予定だったレストラン」「延べ5,118㎡のレストラン」「高さ32mの旋回ライド」がばっさりカットされています。

もし、「2020東京五輪」が無ければ、ランドの新エリアは、今とはかなり違った様子になっていたことでしょう。少なくとも今のランドは、当初オリエンタルランドが思い描いていた「2023なりたい姿」ではないです。それがよかったのか悪かったのかの答えは、多分、永遠に出ないでしょう。

 

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